フィンチの嘴」に続き,進化に関する本を幾つか読んでいる.まずは王道の「種の起源」なのだが,今回読んだのは「超訳」である.本書における超訳とは,原文を逐一正確に翻訳するのではなく,大まかな流れは変えずに適宜分かりやすいように修正を加えて調整した翻訳となっている.しかし,ただ安易な平文に置き換えられただけではなく,「種の起源」を理解するために必要な情報が盛り込まれているところが本書の最大の特徴である.ダーウィンが元々地質学のバックグラウンドを持ち古生物学にも関わっていたという経歴や,種の起源で仮説のまま残された部分について現代科学の知見を訳注に織り交ぜて紹介するなど,読み進める上で引っかかる部分がきちんと整理されている.原書の雰囲気を残しつつ上手い具合に解説を取り入れた,非常にバランスの良い本だと言える.

本書は中高生向けに書かれたようだが,当然大人が読んでも十分楽しめるような内容だ.進化論に関する下手な新書や解説書を読むよりかは,こういう本できちんと学んだほうがよっぽど良い.原書のハトで挫折した人にとっても読んでみたいという意志さえあれば確実に全部読み切れる分量なので,初めの1冊として最適な本だと思う.