だいぶ時間が空いてしまった.「外国語で発想するための日本語レッスン」に続いて本書も既に読み終えていたのだけれども,色々な印象をもう片方の本に引っ張られそうだったので,あえて書評を書くのを先送りにしていた1冊.少し間をおいて改めて通読したのだが,その間に本書の技術をどれだけ現実に活かすことができたかと考えると,なかなか自分で評価するのは難しい.

本書「外国語を身につけるための日本語レッスン」は,会話における論理的な言語技術を身につけるための本である.疑問と回答を繰り返す論理的な対話は,基本的に言語に依存しない.ただ,言語の背景にある文化や共通認識によって,そのスタイルというのはかなり違ったものとなっている.そういった点において外国語に翻訳できるような日本語というのは,日本語でありながら日本語的ではない一面も持つ.本書はその違いを埋めつつ言語的に互換があるような論理的な会話を組み立てるために,日本語で曖昧になっている部分をとことん突き詰めて理解するところから始まる.そして,自分の理解を相手にはっきり分かりやすく伝え理解してもらうためには,どういう情報を伝えればいいのか,そしてどういう順番で伝えればいいのかといった具体的な手法が述べられる.

「外国語で発想するための日本語レッスン」が文章の書き方指南だとしたら,本書はプレゼンテーション指南の本だ.自分の考えを人に伝えるという点では同じだが,対話ならではの会話のやり取りやリアルタイムで流れる時間は,文章とは違った即興性や論理展開を必要とする.取り敢えず大学生は背伸びした振りをしてビジネス書や就活本に手をだすくらいなら,一通りこれを読めと言いたくなるような,非常に信頼出来る1冊.できる事なら,テストで自己満足の論述や発表をしては一人満足するものの実際の点数はあんまり良くない,みたいな昔の自分に教えたいくらいだ….