一般化線形モデルやロジスティックモデルなどの基本的な線形回帰を復習するために,久しぶりに本書を引っ張りだしてきてひと通り読み返した.自分としては理論や基本的な部分はある程度抑えているつもりだったけれども,検定であったり上手く回帰をするためのデータの条件であったりといった細かな部分に関しては,まだまだ不勉強なところが多い.とにかくデータに対して回帰をかけてこれで良しみたいな部分があったので,そういった部分を補うという意味でも良い復習になった.最近はMCMCにもっぱら専念しているが,基礎であったり古典の部分もしっかり抑えておかなければ….

タイトルに「医療統計学」と難しそうな名前が付いている本書だが,原書のタイトルが”Introductory statistics with R”であるように,実質的には統計解析ソフトRの入門書である.例題で扱う題材として医療統計のデータが使われているだけで,内容自体に医療分野の専門性は無い.本書前半では,基本的なRの使い方とともに統計解析の基礎が説明され,後半になると,線形回帰や重回帰分析,ロジスティック回帰,生存分析などの具体的な解析手法が紹介される.全体を通して,サンプルデータを用いた豊富な解析実例とRのコード例がセットになっているため,必要ならば解析を再現することも可能である.そのため,Rを勉強するのも良し,解析手法を勉強するも良しと,初心者から中級者にかけての読者向けの非常にバランスの取れた構成となっている.また,理論よりも実戦向きの内容となっており,検定方法やモデル選択の比重が大きいのが本書の特徴でもある.そういえば,私がRを触り始めた頃は「The R Tips―データ解析環境Rの基本技・グラフィックス活用集」がまさにバイブルといった感じだったが,プログラミングとしてのRの解説がメインで統計解析の流れを説明した具体例は少なく,実用的な部分は本書をよく参照していた記憶がある.

ということで本書はR本の中でも結構オススメできる部類なのだが,どうやらAmazon丸善の公式ページ丸善&ジュンク堂のネットストアなどの主だったネット書店で品切れが相次いでいるようだ.ともなると,本書を手に入れるにはAmazonのマーケットプレイスで高い値段で買うか,大きな書店で売れ残っている本を見つけるかするしか無さそうだ.まあ今となってはRと統計に関する書籍は山ほど出版されているので,本書がこれから増刷などが掛かることは難しかもしれないが,このまま絶版になっていくには実に惜しい本だと思う.