本書は,地元岡山県北部で猟師になった著者が,猟銃や罠などを使ってイノシシやシカ,鳥などの動物を狩る「リアル猟師奮闘記」だ.実際に山に入って狩猟をするのは勿論のこと,狩猟仲間やベテランとのやり取りや日々の生活なども描かれる.

最近めっきり漫画を読まなくなってしまったのだけれども,ネットで評判になってる本書を見てたまたま買って読んでみたら,これがなかなか良かった.絵やコマの割り方が細かくないため素直に物語や知識を追えて,なおかつ実録モノというところが,個人的に気に入った要因だと思う.変に説教臭く無いのも好感が持てる.それでいて本能的な肉への欲求であったり,家畜化されていない動物を仕留めそして食べるという行為の心理的な変化を感じ,料理に化けるときの喜びのようなものがダイレクトに伝わってくる.要所要所に挟まってくる日本の狩猟のシステムであったり,狩りの方法や先人の智慧なども非常に興味深い.知的好奇心も満たされつつ一般人の日常では味わうことのない世界を覗くことができて,個人的には満足度の高い作品だった.狩猟時期が限られていることもあって新しいネタがどんどん出てくるわけでもないようだが,次のシーズンの狩猟の成果に期待したい.