六本木ヒルズ49Fアカデミーヒルズにある会員制図書館「六本木ライブラリー」のアドバイザーの著作で,そこで扱っているようなビジネスパーソン向けの選書を紹介した本書.選書は著者が重要だと思う幾つかのジャンルに分けられ,ロジカルシンキングやビジネススキル,コミュニケーションスキル,はたまた「自分のお金」などといったように,あくまで図書館に陳列されているような大枠ではなくターゲットを絞ってまとめられている.また,本を選ぶ基準としてもジャンルの「基本書」となるような代表的で費用対効果の高い本を選んでいるとのこと.

本を紹介する本なんて言ってしまえば読み手が次の本を見つけらさえすればそれでいいわけで,そこにアレコレ言うのも難なのだけれども,気になった点を幾つか.

まず全体の雰囲気としては,ちょっと前によく聞いたようなトピックが大半を占める.言ってしまえば勝間和代以降の人々が提唱するようなスキルや生き方で,その界隈を追っていた人間からすると目新しさをあまり感じないだろう.実際に本書最初のロジカルシンキングで紹介されているのはまさに勝間和代が最初期に紹介していた本なので,何とも言えない懐かしさを感じさせる.

選書は自分が口出しする部分ではないのでいいとして,なぜその本を選んだのかといった書評の部分が本書は薄い.こういう技術や知識が必要だからこの本はオススメですといういわゆるキュレーションを軸にしているにも関わらず,それを読むべき理由付けとしての書評が機能していないというか,こういうことが書いてあるから読むべきくらいにしかなってない.紹介するアイデア自体が,誰も聞いたことのないような奇抜で斬新で面白そうなものであればそれで良いが,本書はそうじゃない.例えばロジカルシンキングが大事というときに,ロジカルシンキングの本を持ってきてこれ名著だからオススメですと言われるのは,それじゃあ本屋のポップ(紹介文)と変わらないんじゃない?と思ってしまう.その本がどう重要なのか,なぜ基本書として選ばれる名著なのか,類書と比べてどういう立ち位置の本なのかなど,色々な切り口がオススメの説得材料としてあるといいのだけれども…….中には「7つの習慣の続編だからって舐めてないで第3の案も面白いから読めよ」といった良さげな紹介も含まれているものの,全体的に本の羅列にしか感じられないのが残念だ.