映画が始まる前に読んでおこうと思って読んだ作品.本作品を原作としてハリウッドで映画化され,向こうでは”Edge of Tomorrow”という題になっているそうだ.Rotten Tomatoes評をみるかぎり,なかなか評判は良さそうなので期待が高まる.

これを読んで一番に思い浮かべたのがダンカン・ジョーンズの「ミッション: 8ミニッツ」だった.といっても,本書が出たのが2004年,映画は2011年.個人的にアイデアのオリジナリティとかは気にしないのでそれはどうでもいいとして,両者ともに主人公の心情の変化というものが同じ軌跡をなぞるようで面白い.ループの最初はとまどい現状の認識に手一杯なのだけれども,次第に理解をしてその中で自由に動けるまでになる.そして最終的にはその時間に愛着を抱くようになり,目標の達成とともにその愛する時間は終わってしまう.逆に結末はまったく違う.一方は理想的な解を見つけて愛する人と結ばれ,もう一方は愛する人を失いながらも残酷な世界を生き抜く.時間が終わること自体がオチなのだけれど,その先に提示される世界に作り手が考える人間の生きることの捉え方が表れているようで,その点も興味深い.

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉があるが,この場合は不思議さを完全に払拭するような明確な理由がある.だがそれは周りからは認識できないし,能力や成績などの結果からしか推測することができない.たとえそれを外部が認識したとして,無限回の試行を勝ちの理由にできるんだろうか.全探索に近いような繰り返しでパターンを覚えたから? それとも無限回の試行で訓練されたから? それはある意味で機械学習の文脈での過学習のような気もするし,目的関数の最適解への収束にも取れる.まあループが繰り返したりネストせずにその場限りなら,どちらにせよループの末の結論が本人の納得という意味で正しいのだろうけれども,そうして生き延びた彼ら/彼女らの将来を思慮せずにはいられない.