爽快メカアクションかと思いきや,実は警察の派閥争いやら内部腐敗やらのシステムに身悶えする(萌える)小説だった.そもそも人が運用する外部装甲の設定や機龍兵と呼ばれる特捜部が隠し持つ圧倒的な武力描写はちょっとしたスパイスであり,むしろ組織内の人間模様が中心にあった.警察という国家権力として治安維持という職務に準ずる中で,その理想としての公正さと現実の不条理さの狭間で身動きが取れなくなり,組織として硬直する様は非常にリアリティがある.そこに物語を際立たせる要素として,機龍兵に搭乗する特捜部3人の傭兵の過去が織り込まれていくのだが,文字通り三者三様な職務への姿勢と,その過去とのつながりが本書の醍醐味の一つとなっている.

本書は様々な伏線や登場人物の語られない一面を残しつつ終わっている.機龍警察シリーズはこの後も暗黒市場,自爆条項,未亡旅団と続いていくので,続編を読むのが楽しみな作品だ.