Google前CEOのエリック・シュミットと前プロダクト担当シニア・バイスプレジデントのジョナサン・ローゼンバーグが出した本書「How Google Works」は,21世紀の新しい社会の働き方を決定付ける1冊になるのは間違いない.それは現在もっとも成功している会社として,そしてもっとも今の社会に則した働き方として迎え入れられることになるだろう.インターネットや様々な技術の普及によって私たちの生活が変わったように,私たちの働き方も変える必要がある.その下地はインターネットの普及によって進み,そしてGoogle自体がそれに沿うようにともに作り上げてきたといえる.その試行錯誤の結果,失敗と成功,それらの一部始終が本書には詰まっている.

本書は,Googleにまつわる文化,戦略,人材,意思決定,コミュニケーション,イノベーションという6つの章から成り立っているが,そのどれもに共通しているのが人の大切さである.Googleはエンジニアの会社だ.それはセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジが会社を興した時から変わらない.本書ではGoogleが雇いたいと思う有能な人材のことを「スマート・クリエイティブ」と呼ぶ.スマート・クリエイティブとは,知的労働において専門性と創造性を併せ持つ人材のことを指し,旧来のナレッジワーカーとは別のタイプだという.そのスマート・クリエイティブが最大限に成果を生み出せるような場所を作り上げるのが会社の目的だ.そのために人材を雇用し,会社のシステムを作り上げたといえる.例えば,おもちゃの散乱した遊び場のようなイメージで有名なGoogleも,実際に机に向かうオフィス部分では手を伸ばせば隣の人に届くようなスペースに社員を詰め込んで,お互いにコミュニケーションが生まれるようなデザインにしているという.これも文化の一つとしてよく知られていることだが,きちんとした理由が裏にはある.

この他にも本当にたくさんのGoogleらしさが本書には詰まっている.明日から実践できそうなことや,そもそも成功しているGoogleじゃないと到底できそうにないこと,そもそもスマート・クリエイティブなんてどこにいてどうやったら採用できるんだといったことまで様々だ.少なくともこれまで数々のGoogleにまつわる本が出版されてきたが,この本ほどGoogleの本質に迫るものは無いだろう.とにかく読んでみて,Googleという巨人の巨人たる所以に触れてみてほしい.