いわゆるライトノベルで生物学を勉強しようという本.タイトルと中身があまり一致していない部分もあるが,無生物と人間の生物の境界というものを,無生物であるロボットと比較しつつ現代の生物学と照らし合わせながら考えてみようといった内容となっている.原始地球において生物がどのようにして生まれたかを初めてとして,遺伝学や発生生物学,進化学,微生物学など,「生物」を軸にしてかなり広い部分をカバーしており,身近な疑問などを交えて非常にわかりやすく解説されている.物語自体はストレートでよくありがちな,ちょっと不思議系の恋愛物で非常に分かりやすい.登場人物は,何も知らないが勘だけは冴えていて情熱ある主人公と,生物のことなら何でも知ってる同級生の女の子と,科学の叡智を結集して作られたメイドロボットの3人(2人+ロボット)で,生物部を舞台にして生物について勉強するといった感じで話は進んでいく.ただ,逆にメイドロボットである無生物の方から生物の条件を考えることは殆ど行われないので,ロボットの話と思って読み進めると肩透かしを食らう可能性がある.あと最終的に生物と無生物の境界に関して結論なんてものは出せないのだけれども,厳密な定義はともかくとして,生命誕生や進化の歴史,多様な生命活動などを通じて,世間一般に生物と呼ばれているものについて纏まった理解をすることは出来ると思う.

私自身高校で生物をまともに勉強してこなかったので実感がないが,レベルとしては高校〜大学初頭くらいの内容だろう.読んで理解するだけなら中学生でも問題ないと思う.ただ,図などが少ないのが少し難点といったところか.あとはホメオボックスやゲノムインプリンティングなど少し難しい話題も出てくるが出てくるが,話の流れの手助けとなるよう深入りしないので,概念程度の理解で問題ない.

猫耳メイドロボット良いですね.なんでロボットがそんな格好なのかというと,完全に人間に似せると両者の区別が付かなくなって犯罪に使われるからという設定らしい.変に納得してしまった反面,現実の科学を見る限り不気味の谷を超えるのは当分先だろうし,まだまだそんな心配する必要な無いのかもしれないと悲しい気分になったり.