以前「情熱大陸」という番組で理論天文学者である小久保英一郎がTVで語った言葉が,今でも強く印象に残っている.その言葉が番組のページに残っているので少し長めに引用させてもらうと,

「探検は知的情熱の肉体的表現である」

(チェリー・ガラード:スコット南極探検隊)

僕はこれ、だいッ好きな言葉で。

もう何ていうか、 このように生きていきたいと思っているわけです。

「シミュレーションは知的情熱の計算機的表現である」と。

ほんとは僕、探検家になりたかったんですけど。

まあなかなかそういう世の中でもないので、

知的な探検をする、と。

で、道具はスーパーコンピュータということでやっています。

http://www.mbs.jp/jounetsu/2008/01_20.shtml

と,計算機シミュレーションを端的に素晴らしい言葉で言い表している.本書「スーパーコンピューターを20万円で創る」は,小久保英一郎がスーパーコンピューターGRAPEの開発に参加する少し前,まだスーパーコンピューターというものが企業主導の大資本で大規模開発されていた頃に,重力多体問題のシミュレーションを行うために自力でスーパーコンピューターを組み上げた研究者たちの実話の物語となっている.

内容はかなり大雑把に物語を追いかける形となっており細かい部分に少し物足りなさは感じるものの,それでも当時の研究者の熱意や苦悩がひしひしと伝わってくる.私自身も今現在彼らと同じような立場にあるのだが,自分の境遇と似た部分も多く,非常に勇気づけられると同時に研究への情熱を奮い立たせられるような作品だった.