外資コンサルのマッキンゼーで採用担当を12年務めた伊賀泰代氏による,マッキンゼーが必要としている人材について,その採用基準を細かく解説した本.著者に関して某有名Bloggerではないかという噂が一部で流れているが,本書では全く触れられていない.

マッキンゼーの「採用基準」という題が付けられているものの,実際には副題にある「地頭より論理的思考力より大切なもの」として,リーダーであること,つまりリーダーシップが重要であるということが強く強調される.特に本書後半では,リーダーシップに対する日本と欧米の捉え方の違いから,どういう行動がリーダーシップとなるのかといった定義に近い部分までを細かく解説される.本書はあくまでマッキンゼーが欲しいと思う人材像という前提で話がされるものの,必要となる能力に関してそもそも日本の認識がずれているということで,日本企業と外資企業の認識の対立として描かれる部分が多い.その点について,やや自社礼賛や日本の企業体質に関するバッシングのように見える部分もあるが,著者の主張は全体を通してリーダーシップが重要なのだというところに集約される.

個人的な興味としては採用のテクニックよりも採用後に新人をどう教育しているかといったところが気になっていたので,その点本書ではリーダーをどう育てていくのかといった部分にも触れられており興味深い.また,特に著者個人の体験談を通して語られるリーダーシップの技術や重要性は,コンサルタントとしての知的生産におけるスタンスを垣間見ることができるような内容だった.なかでも,会議などで何時間も常に考え続けられるだけの知的体力が必要なのだという主張はまさにその通りだと思う.著者はそれが足りなかったのでコンサルとしてより採用担当としてのキャリアに進んだと書かれていたが,これができるかできないかは相当大きなポイントなのだろう.