慶応義塾大学発のバイオベンチャーHuman Metabolome Technologies社が,メタボロミクスについての実験手法や研究事例などをまとめた包括的なレビューを無料で公開している.
The Proceedings of Metabolomics | Human Metabolome Technologies
目次
第一章 三位一体
第二章 メタボロミクスの概要
第三章 メタボロミクスで用いられる分析手法
第四章 多変量解析を用いたメタボロームデータ解析
第五章 データベース
第六章 メタボロームデータに影響を与える諸要因
第七章 メタボロミクスの応用と実用
第八章 HMTでのメタボロミクス手順
第九章 生体試料
第十章 ケーススタディ
上記の目次を見てもらえれば分かる通り,このレビューではメタボロミクスという分野全体に関して,その歴史やオミクス(-omics)における位置づけを明確にしつつ,実際の実験手法や解析手法,そして様々な分野への適応事例をまとめ上げたものになっている.冒頭の第一章でまず語られる「三位一体」とは,分析化学・コンピュータサイエンス・生物学のことを指し,これらが互いに支えあってメタボロミクスという分野が成り立っていることが述べられる.その3つの側面それぞれについて,分析化学では化合物の測定技術,コンピュータサイエンスではデータ解析技術,生物学ではメタボローム解析の意義や適応例といったように,それぞれメタボロミクスに必要な技術や知識が紹介される.
私自身はメタボロミクスについてほとんど知識がない状態でこのレビューを読んだのだが,専門外の自分にとってもメタボロミクスの分野全体を俯瞰し,それぞれの内容について理解を深めることができたと思う.参考文献もかなり充実しており,関係ありそうな論文を幾つかピックアップしてそれぞれ読み進めているところだ.
もしメタボロミクスに興味があったり研究に関係しそうな人は,ぜひこのレビューを一読することをオススメする.また,同社のウェブサイトでは研究領域別論文リストといった論文のサーベイを公開しているほかに,「メタボロミクスの論文を読もう」といったセミナーも日本各地で開催しているようなので,気になる人はチェックしてみてはどうだろうか.