最初は「なんでアドテクはミリ秒レベルで競っているのか」ということを知りたくて本書を手に取ったのだけれども,その疑問が解消できたのはもちろんのこと,分野全体について広く浅くカバーされていてアドテク入門にに最適な1冊だった.今までは広告配信なんて結局ユーザ情報とコンテンツのマッチングだろう程度に思っていたところがあったものの,実際には広告配信の裏にはアドネットワークの市場が形成されていて,そこではオークションによって広告主と配信媒体とのせめぎ合いが行われていた.そうした両者の最適化の結果がミリ秒単位での駆け引きの後にユーザに広告を配信するという現在のスタイルを作り上げたのだと考えると,インターネットにおける広告というものの規模と,それを可能にしたフロントエンドやネットワークレベルでのエンジニアリングに驚かされる.
本書の前半の巻頭企画と特別企画では,実際にアドテクに触れるときの背景知識や運用方法について,特集1では実際のミリ秒のしのぎをけずる広告配信のコアについて,後半の特集2,3では実際の技術について解説される.RTBにはじまり,DSP,DMP,SSP,CGM,レムナント,インプレッションなどなど,アドテク初心者には聞きなれない専門用語のオンパレードだけれども,そのあたりはきちんと本書の中で解説されるので,分からないながらも読み進めていくと次第に理解することができる.雑誌1冊分の分量で気軽に読めて,実際のアドテクのネット記事を読むための基礎を身につけられたと思う.