なんともショッキングなタイトルだけれど,それに名前負けしないほどの内容の濃い興味深い本だった.本書はコンサルティング業界に長年勤めた著者による,業界内部で行われている一見立派で頭が良くて有効そうな仕事がいかにハッタリであるかということを暴露する本である.もう少し正確に言えば,そうしたコンサルティングのやり方は結局は銀の弾丸ではなくて,成功する場合もあるし失敗する場合もあるし,実際には顧客を振り回すだけの代物にすぎない.一番大事なことは,そういうことを踏まえた上で,コンサルティングとは究極的には人との対話による理解なのだということが本書の主張である.コンサルが悪ということを中の人が認めたということで溜飲を下げる本では決して無いことに注意.
コンサルティング業は常にエリートが集う華々しい業界であることには間違いない.人の会社に行っては口出しをするのが彼ら/彼女らの仕事だ.会社の方針を決めたり事業レベルで効率化や業務システムの最適化を行い,目もくらむような高給で考えられないほど大量の仕事をこなす.論理的な分析で複雑なフレームワークを駆使する様は,まさに職人芸である.しかし,そんなコンサルタントであっても将来だけは予測することができない.だから予測が外れてしまった場合には,望んだ結果が得られないどころか,最悪企業が潰れてしまうことだってある.
といって,じゃあコンサルティングは虚業で意味のない金食い虫だというかと,必ずしもそうではない.自社だけではできない内部の効率化やレイオフは内部の利害を超えて第三者だからできることだし,戦略立案こそ本当に企業が必要としていることである.例えば,戦略計画を立てることに関して,以下のようなことを言っている.
問題は,人びとが戦略計画イコール解決策だと信じてきたことにある.だが,計画自体にはほとんど価値はない.名高い将軍たちが示したとおり,計画を立てる過程にこそ価値があるのだ.
「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」P.59
つまり,コンサル会社が立てた戦略計画の紙の束が重要なんじゃなくて,立案の過程で行った調査や研究自体が有用なのだと.そしてそれは将来的な計画変更のときにも大いに役に立つということだ.
経営戦略や最適化プロセス,リーダーシップなど他の分野でも上と同様に,コンサルティングを取り巻く問題点と解決法が一通り提示される.結論も重要ながら,その考え方自体も興味深い.それに,それぞれの分野が,どのように発展してきたのか,誰が始めに言い始めたのかといった歴史が紹介されるのも本書の特徴だ.どこぞの教授が論文に書いたのが始まりだとか,あのコンサル会社から広がったとか,そういった経緯も,業界の裏側を覗いているようで面白い.