3章 キラーX染色体

  • その因子は,どのようにして利己的な優位性を獲得したのだろうか?
    • 精子形成時の減数第2分裂においてY染色分体の不分離
  • いかにして,その因子は出現したのだろう?
    • ???
  • どれくらい昔に出現したのだろう?
    • ???
  • 大型生物に対する影響はどのようなものだろうか?
    • ???
  • どのくらいの速度で,その因子は分布を拡大すると期待されるだろうか?
    • 頻度は高くならない
  • 種内における頻度はどれくらいか?
    • 種によってばらつきがある
  • 頻度を決定づけているものは何か?
    • オスの側の精子の補充の不十分さ
    • メスにおける有害なホモ接合効果
  • いくつかの種にその因子が見いだされるのに,他の種には見いだされないのはなぜか?
    • ???
  • ゲノムの他の因子は,利己的な因子に対抗してどのような適応を強いられてきたか?
    • キラーX染色体に対し,Y染色体に連鎖した抑制因子または常染色体上の抑制因子が,X染色体のドライヴを抑制
    • キラーX染色体がドラッグするほど強く抑制するものもある
  • ホストの系統に対しておよぼしてきた効果以外に,どのような影響をもたらすだろうか?
    • ???


フィンチの嘴」に続き,進化に関する本を幾つか読んでいる.まずは王道の「種の起源」なのだが,今回読んだのは「超訳」である.本書における超訳とは,原文を逐一正確に翻訳するのではなく,大まかな流れは変えずに適宜分かりやすいように修正を加えて調整した翻訳となっている.しかし,ただ安易な平文に置き換えられただけではなく,「種の起源」を理解するために必要な情報が盛り込まれているところが本書の最大の特徴である.ダーウィンが元々地質学のバックグラウンドを持ち古生物学にも関わっていたという経歴や,種の起源で仮説のまま残された部分について現代科学の知見を訳注に織り交ぜて紹介するなど,読み進める上で引っかかる部分がきちんと整理されている.原書の雰囲気を残しつつ上手い具合に解説を取り入れた,非常にバランスの良い本だと言える.

本書は中高生向けに書かれたようだが,当然大人が読んでも十分楽しめるような内容だ.進化論に関する下手な新書や解説書を読むよりかは,こういう本できちんと学んだほうがよっぽど良い.原書のハトで挫折した人にとっても読んでみたいという意志さえあれば確実に全部読み切れる分量なので,初めの1冊として最適な本だと思う.



19世紀にダーウィンが「種の起源」で夢見た世界を,20世紀の進化学者が現実に証明してみせた.この「フィンチの嘴」は,ダーウィンが進化論の着想を得たとされるガラパゴス諸島において,ダーウィンフィンチと呼ばれる小さな鳥の生態を調査した研究者達と,そこから導き出される生物の進化の存在やその振る舞いに関して克明に記された,進化論の一つの歴史書のようなものである.

その進化の解明の歴史は,グラント夫妻などがガラパゴス諸島においてフィンチを対象にした研究の過程をひとつひとつ辿りながら語られる.その端々で対比のように登場するダーウィンの航海日誌やガラパゴス諸島での研究記録によって,現在と過去を行き来するかのように進化論の仮説と証明が行われていく.ダーウィンにまつわる逸話はどれも面白いものばかりで,ああしていればこうしていればといった「たられば」な空想をかきたてるものや,偶然の重なりがもたらす思いがけない結果,ダーウィンの観察や研究における非凡さなど,様々な側面を垣間見ることが出来る.グラント夫妻の研究はまた,同時代に他の種や地域で行われた進化の痕跡をめぐる研究とも関連付けられ,本書の後半では身近で起こる進化についても取り上げられる.そこでは,進化というものは時空間的に限られるものではなく,複数の生物が生態系を構成するありとあらゆる場所や時間で起こっているものであるということが強調されて述べられる.これは進化論と創造論の対立などの問題と繋がる重要な部分であり,アメリカの進化論に関する状況を深く受けてのものだろう.キリスト教やインテリジェンスデザインなどに馴染みがない人にとってはあまりピンとこない部分だと思うが,ここで最も重要なのは,進化は今も身近で起こっているという事実なので,進化に関する認識というのは宗教と科学の対立に限ったことではないということを再確認する意味でも,後半の章は重要な役割を果たしている.この辺の話題は非常に難しいところなのだが,本書ではあくまで科学的な事実を基にした視点で書かれており,上手く纏めていると思う.

全体的にかなりボリュームのある構成だが,上で述べたように大部分は実際にフィンチのフィールド研究に関する内容なので,退屈な生物学の講義というよりかは無人島の冒険物語の小説のような感覚で非常に読みやすい.進化論に関する抽象化された理論を手っ取り早く知りたいという人にとっては本書はあまりに具体例が豊富で冗長すぎるため薦めにくい部分はあるのだが,理論を組み立てる筋立てはかなり明確に書かれているので,その点は流し読み程度でも十分面白いと思う.あと,表紙のみならず本文中にも挿絵が豊富に含まれているので,それを眺めるだけでも非常に面白い.ガラパゴス諸島に行って実際にフィンチやサボテンなど色々見てみたくなるような本だった.



これまでは配偶子キラー因子を見てきたが,次に母性効果キラー因子を見ていく.これは,ヘテロ接合体メスに作用するキラー因子である.また,植物の花粉に作用する配偶体因子についても少し触れる.

2.3

  • 配偶子キラー因子
    • ヘテロ接合体オスに作用して,因子を受け継いでいない精子を殺す (e.g. tやSD)
    • 対象となるのは1倍体の配偶子
  • 母性効果キラー因子
    • ヘテロ接合体メスに作用して,因子を受け継いでいない子供を殺す
    • 対象となるのは2倍体の個体
    • このキラー因子は父親由来でも母親由来でも働く場合がある