すごい人たちに自分のことについて話して貰いたいという欲求は,ある意味下世話な心理でありながら,インタビューという対話の一つの特徴でもある.それが現在も第一線で活躍し続ける研究者であれば,なおさら気になるものだ.本書「知の逆転」は,著名な学者6人のインタビューをまとめた本であり,執筆した本や今までの研究内容と絡めながら現在の主張を分かりやすく簡潔に追いかける内容となっている.聞き手が日本人であることも影響してか,所々に日本に関連した意見も見られる.彼らがどのように世界を捉え,そして日本を見ているのかを垣間見ることができるちょっと変わった面白い本でもある.
本書でインタビューに応じている人物は,
- 「銃・病原菌・鉄」のジャレド・ダイアモンド
- 「生成文法の企て」のノーム・チョムスキー
- 「火星の人類学者」のオリバー・サックス
- 「心の社会」のマービン・ミンスキー
- Akamai創設者でCEOのトム・レイトン
- 「二重らせん」のジェームズ・ワトソン
と,知っている人ならばこちらが萎縮してしまうなほどの豪華な面々だ.それぞれが自分の研究分野を開拓し,その後の著作や起業,数々の科学への貢献を経て一般にも認識されうる人物ばかりである.その彼らがインタビューを通して語るのは,もちろん今まで積み上げてきた研究成果でありながら,同時にこれからの未来を予想し「今現在」の世界に向けた提言でもある.
本書は,そのような彼らを知らない人にピッタリの入門書でもあると同時に,たとえ著作を読んだことのある人にとっても十分に興味深い内容となっている.とにかく上で述べた名前に心当たりがあるなら,本書はまさにオススメだ.自分から見てもかなりミーハーな精神だとは思うが,それに足る並びではないだろうか.