映画「ヒックとドラゴン」の設定資料集「The Art of How to Train Your Dragon」がようやく届いた!先日書いた日記でこの映画に対するテンションの上がり具合は明らかだとは思うが,本書も非常に素晴らしい内容だったので,ここで少し紹介したい.この感動を伝えるには写真で紹介できれば一番なのだが,そこはやはり実際に買ってもらって全編余すところなく楽しんで頂きたい.

マット仕上げのカバーを取ると,黒地に赤いドラゴンのロゴの入ったハードカバーが現れる.全編カラーの本書は,約160ページ程度ながら手に持つと少し重い.本書は映画”How to Train Your Dragon”(邦題:『ヒックとドラゴン』)の設定資料集だ.映画の世界観であるヴァイキングとドラゴンが共存する神話的かつ幻想的な世界を,豊富なスケッチとコンセプト画で魅せてくれる.本書は主に,個性豊かなドラゴンのキャラクター画,同じくヴァイキングのキャラクター画,映画の世界観を表現する背景や風景画,そして最後に幾つかの絵コンテと3D画により構成されている.ドラゴンやヴァイキングの設定資料では,映画で登場するキャラクターから映画では見られないボツ作品まで,これでもかというくらい大量の絵やCG作品が収録されている.ちなみに,初期設定ではアスティ(Astrid)のキャラクターはそばかす&三つ編みだったようだ.コンセプト画からCGモデリングまで,本書では別バージョンのアスティの資料が掲載されている.次に背景や風景画では,バーク島周辺の切り立った山々や深い森の中にある入り江などの壮大な自然が描かれるほか,ヴァイキングの村の細かなディテールも見ることができる.そして最後に絵コンテと3D画の部分では,アーティストが積み上げてきた世界観を3D映画として表現するための,カット割りや一連の動きが紹介される.ここでは3Dのモデリングに関して特に深入りしないものの,ドラゴンの吐く炎の表現であったり3Dにおける光の表現について触れられている.これらの話題はDVDの特典映像でも同様に語られている内容なので,そちらも参考にして頂きたい.

といったように,本書は「ヒックとドラゴン」好きなら必見の内容だろう.たっぷりと収録されているコンセプト画や背景を眺めることで,新たな発見があり,世界観を堪能でき,映画の裏側を覗き見ることができ,そして想像力をかき立てられる素晴らしい設定資料集となっている.



  • / # ルートディレクトリ
  • /vmlinuz # /bootに置かれているLinuxカーネルにシンボリックリンクが貼られている
  • /bin/ # バイナリ形式の実行ファイル置き場
  • /boot/ # Linuxカーネルやブート処理に必要なファイル置き場
  • /dev/ # デバイスファイル置き場
    • /tty* # 制御端末に対応している.”tty”は”Teletype”が由来
    • /null # nullデバイス.出力の破棄先に使う
    • /zero # zeroデバイス.Nullが延々返ってくる
  • /etc/ # 設定ファイル置き場
    • /hosts # ホストとIPの対応付けを行う
    • /hosts.allow # 接続を許可するホスト一覧
    • /hosts.deny # 接続を拒否するホスト一覧
    • /passwd # ユーザの名前やホームディレクトリ一覧
    • /resolv.conf # 名前解決のためのDNSサーバ一覧
    • /shadow # ユーザのパスワード(暗号化されている)
    • /rc.local Linuxの起動時に実行されるシェルスクリプト
    • /rc?.d/ # 起動用ファイルが置かれるディレクトリ(各ランレベルごとに番号が振られている)
  • /home/ # ユーザのホームディレクトリ置き場
  • /lib/ # 共有ライブラリ置き場
  • /lost+found/ # システム障害時の不明ファイル避難先
  • /proc/ # プロセスファイスシステム(procfs)置き場.CPUやメモリの情報などが含まれている.
    • /cpuinfo # CPU情報
    • /meminfo # メモリ情報
    • /loadavg # ロードアベレージ(uptimeやtopに表示される)
  • /root/ # スーパーユーザのホームディレクトリ
  • /sbin/ # システム管理者が使用する実行ファイル置き場
  • /tmp/ # 一時ファイル置き場.リブートすると消える
  • /usr/ # 複数マシンで共有可能なファイル置き場
    • /src/ # システムコマンドのソースコード
    • /include/ # システムのヘッダファイル
    • /share/ # 複数マシンで共有可能なファイル(特にドキュメント系)
      • /man/ # manページ
        • /man*/ セクションごとにディレクトリが分かれている
    • /info/ # infoファイル
    • /local/ # システムの管理者が管理するファイル
  • /var/ # 頻繁に書き換えられるファイル置き場
    • /log/ # ログファイル
    • /spool/ # 一時的に保存するファイル
    • /tmp/ # /tmpと似ているが,リブートしても消えない
    • /run/ # 起動中のプロセスのPIDが保存される.Ubuntu12.04ではルートディレクトリの/runにシンボリックリンクが貼られている

環境

なるべく一般的なLinuxの情報を参考にしつつ,手元のUbuntu12.04と照らし合わせながら作成している.環境によっては違う部分があると思うので注意.

参考



この「ヒックとドラゴン」を観たあとの多幸感たるや,人に話さずにはいられなかったほどだ.ひとしきり知り合いに薦めまくった後,その興奮冷めやらぬままにiTunesでサウンドトラックを購入し,Amazonで「The Art of How to Train Your Dragon」をポチってしまった.

「ヒックとドラゴン」(原題:”How to Train Your Dragon”)は2010年に公開されたドリームワークス製作の3Dアニメーションだ.ストーリーや見どころなどの解説はWikipediaやAmazonを観ていただくとしてココでは割愛するが,個人的に感動した点を1つだけ書いておきたい.それはブルーレイの特典映像で語られているドラゴンのキャラデザインについてだ.主人公との友情を深めていく「トゥース(英語ではToothless)」と呼ばれるドラゴンは,他に登場するオリジナリティあふれるドラゴンとは違い,人間との交流で生ずる感情の機微を表現する必要があった.動きは哺乳類であるネコをモチーフにしていたり,肌は無機質な爬虫類の質感に加えて黒豹をイメージしたりしているのだが,表情を作る上で重要視したのがドラゴンの「耳」だという(正確には角という設定のようだが).トゥースの頭についている耳を自在に動かし,喜びや興味を示す時には耳を立て,威嚇や不快感を示す際には耳を倒すという動作を付けることで,より感情を表現することができたのだという.それが一番如実に表れているのは,トゥースが地面に描いた絵をヒックが足で踏んだりして遊ぶシーンだ.表情が交互に示されるこの場面では,目の開き具合の他に,耳をひょこひょこさせる姿が印象的で,感情の変化がハッキリとわかるようになっている.この後に二人が初めて心を開くシーンがあるのだが,その展開を予感させるような印象深いシーンであり,耳の表現が非常に効果的に表れている.

これと似た手法は,日本のアニメーションで言えば「アホ毛」だろうか.元々は画一的な髪型に変化を持たせるため付け加えられたであろうアホ毛に動きを付けることで,本人の感情の変化を表現することができたという意味で,非常に似通ったところがある気がした.最近では長いアホ毛で記号を描いたり文字を書いたりという直接的な表現もあるようだが,髪の毛のかすかな動きが感じさせる効果は侮れないものがある.髪と感情が連動しているなんて…と思う部分もあるけれども,アニメーションの作り込みに様々な制限があるなかで発明された表現なのだと考えると,なかなかに興味深い.こういった現実離れした表現方法が許される部分においても,アニメーションを見る楽しさがある.



以前,こんな話を聞いたことがある.羽生善治という桁外れの天才がいなければ,将棋はこれほどまでに一般の人気を得られなかっただろう,と.それは将棋の対局の面白さだけではなく,ゴシップという下世話な興味もかき立てられると同時に,天才の人格であったり普段の振る舞いであったり天才である所以が人々を魅了するからだという.

本書「ツヴァイク短篇集」の最後に収録されている「チェスの話」は,チェスの名手2人がたまたまブエノス・アイレスへと向かう船上で出会い,対決をすることになるという物語だ.一人はチェス世界チャンピオンとして名を上げ,現在はチェスの試合で各地を行脚している男.天才と呼ぶに相応しい彼は,一方でチェス以外のことは何一つ人並みにできないような人間で,その様子は滑稽であり変人そのものだった.もう一人のチェスの名手は,たまたま世界チャンピオンが客と試合しているところに出くわした一人の紳士だった.彼は的確なアドバイスでその勝負を引き分けに持ち込むのだが,その知識と戦術に感嘆した客が世界チャンピオンとの対決を提案しても,その紳士は及び腰でその申し出を断り,どこかへ立ち去ってしまう.紳士を説得しようと追いかけた主人公は,どうしてあれほどまでに卓越したチェスの腕を磨いたか,紳士の過去についての独白を聞くことになる.

この短編では,チェスというゲームに魅了された人間の人生と思考という果てしない深淵が,圧倒的なディティールをもって描かれる.それは,考えるという行為そのものについて一人の人間の日常的な行為を超えて,自身との対峙,知識の欲求,自分と他者の存在,そして考えることに取り憑かれた人間の本質を私たちに提示する.チェスの名手になった紳士の独白は,ある種の心理実験の報告書のようであり,特殊な環境における人間の肉体的な活動と脳内で激しく回転する思考プロセスを追いかけることで,精神の実体たる思考の一つの側面を見事に表現している.紳士の思考は,話が進むにつれ異常さを増していく.その異常さが極限を迎えるとき,ようやく思考における真理が見えてくるようで,その境地に辿り着けない私のような平凡な人間にとっては,その事実にひどく惹きつけられるのだ.



科学研究は得てして価値や有用性が厳しく求められるものだが,逆に必要であると分かっていながらも倫理的な制約や生理的嫌悪感によって,あまり活発に研究されない/できない分野というものも存在する.本書著者の専門である法医学は,その代表例と言っても過言ではないだろう.本書「死体入門」では,法医学という一分野を飛び越えて,生物の死体について様々な側面から分析し,死体というモノの定義や科学的な利用例などに迫る「死体の解説書」である.死体を観察することで,生物の成り立ちや医学的知見,人間の文化までもが見えてくる.

本書は死体にまつわる,ありとあらゆる内容を含んでいる.そのため雑多でトリビアルな話題も多いのだが,本書はおおまかに分けて4つの内容から構成されている.

  • 第2章「人が死ぬということ」
    • 生物としての死体の誕生,腐敗の過程,白骨化に至るまでの詳細な変化
  • 第3章「ミイラに込めた願い」
    • 世界中の様々な文化に共通するミイラの文化と製作技術
  • 第4章「死体をとりまく世界」
    • 現代における死体の処理方法
  • 第5章「死体の利用法」
    • 死体の科学的利用(法医学・解剖学・人類学など)

その中でも本書の一番の見どころといえば,本書をぱらぱらとめくって一番始めに目に飛び込んでくる九相詩絵巻のカラー写真だろう.14世紀の鎌倉時代に描かれたとされるこの作品は,生前の1段階と死後の9段階にわたる死体の変化を追ったものだ.おそらく複数の死体をモデルとして描かれたとされており,記録として描かれたわけでも科学的研究として描かれたわけではないにも関わらず,細部に至るまでリアルに描写されている.本書ではその九相詩絵巻の各相をもとに,死体の腐敗過程が現代医学の知見をもとに語られる.それぞれの相は,以下のような変化をたどっていく.死体となってもなお続く体内の生化学反応により様々な生体の変化が生じ,体の表面には色や模様が浮かび上がる.腐敗により生じる臭いによってハエが集まり,その他にも動物や昆虫が群がる.肉が腐り食べられて骨だけになっても,イヌやネズミなどがそれを齧り利用する.そして最後には土に還る.このような連続的な変化を切り取ったのが九相詩絵巻である.この絵を鑑賞するということは,現代においてむしろ非日常となった死体の変化を感じることができる限られた手段であり,死体への興味や知識を養う上で非常に重要な役割を果たす.

そういえば,前回紹介した「コード・ブルー―外科研修医救急コール」の中でも,近年では遺族に対する配慮や検査機器の発達から,検死が行われる頻度が極端に下がってきていることが懸念されていた.検死が行われないことの一番の問題は,誤診や治療ミスが見過ごされる可能性があることだ.この本では,死因の特定と医療行為の正当性の判断は医者の育成においても重要であるとういことが語られていたが,死因が一見明らかな遺体の検死を行うことは,心情的な面のみならず実情からくる制約もあって,やはり難しいようだ.

私としては正直に言って,本書でいくら死体に関する知識を深め重要性を理解したとしても,人間の死体を目の前にしたときに感じる感情や倫理的な懸念は薄れないだろう.ただし,感情はコントロールできなくても理論的な判断になら,本書の情報は非常に有用になるはずだ.死体に関する感情的な側面と理論的な側面を区別しさえすれば,どのような人にとっても本書を大いに楽しむことができると思う.感情に隠れているだけで人間だれしも興味はあると思うので,本書の内容のどこかにはぐっと引ここまれる部分があるはずだ.